COLUMNコラム
ヘルプフルコンテンツアップデートとは? 実装後に発表されたAIコンテンツへのスタンスも解説
ヘルプフルコンテンツアップデートとは、ユーザーに役立つコンテンツを高く評価し、役立たないコンテンツを低く評価するGoogleのアルゴリズムアップデートです。Googleが掲げる「ユーザーにとって役立つ情報を提供する」という基本方針を促進するために2022年8月25日に英語圏で先駆けて実装され、2022年12月5日に全世界で適用されました。
アップデート後、ユーザーを重視した評価基準が厳格化され、AIコンテンツへのスタンスも明確になっています。情報を把握しておかないとサイトやAIの運用において適切な判断ができず、SEOパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。
アルゴリズムの変更でSEO対策の内容は大きく変化します。「どのような影響があるのか確認したい」「アップデートに適切な対応をしたい」とお考えの方は、ぜひ記事をご覧ください。
ヘルプフルコンテンツアップデートとは?
ヘルプフルコンテンツアップデートとは、検索結果の質向上を目的としたアルゴリズムの更新です。Googleの評価アルゴリズムに「ヘルプフルコンテンツシステム」というランキングシグナルが組み込まれることで、ユーザーにとって価値の高い情報と価値の低い情報を選別できるようになりました。
このアップデート後、ユーザーを重視した評価基準が以前に増して厳格化しています。また、人の役に立たないコンテンツが見分けられるようになったことで、「低品質なコンテンツがサイト順位を下げる可能性」が示唆されるようにもなっています。
ユーザーファーストがさらに厳格化
ヘルプフルコンテンツシステムの導入後、ユーザーファースト=「閲覧者に価値ある情報を提供する」ことが以前にも増して厳格化されました。
具体的には「コンテンツがユーザーの問題解決へ貢献できる内容か」「情報に専門性・権威性・信頼性があるか」「ユーザーの検索意図にどれだけ応えられるか」などです。
このような項目をコンテンツ評価で重視することは今に始まったことではありませんが、ヘルプフルコンテンツシステムでは、高度化したAIをコンテンツ評価に活用することで、その精度を向上させています。
ヘルプフルコンテンツアップデートによって検索エンジンは、ユーザーにとって役に立つコンテンツと役に立たないコンテンツを、以前より正確に見分けられるようになりました。
低品質コンテンツが直接的なマイナス要因になる可能性
「人の役に立たないコンテンツ」が見分けられるようになったことで、低品質コンテンツがサイトの順位を下げる可能性が高まったのも、アップデート後の特徴的です。
近年のGoogleアップデートは、良質なコンテンツの評価点を高くすることで基準を変更することがほとんどでした。しかし、ヘルプフルコンテンツアップデート後は、低品質コンテンツ自体が「直接的」なマイナス要因になる可能性が示唆されています。
以前から低品質コンテンツは、SEOを妨げる「間接的」なマイナス要因ではありました。その代表例が、クロールバジェットやリンクジュースです。
これらのSEO的リソースは、低品質コンテンツがあると無駄に消費されてしまいます。リソース不足に陥ると、重要ページへの評価配分の阻害や、クロール頻度の低下が発生しやすくなります。つまり、間接的に悪影響を及ぼすのであって、低品質コンテンツ自体が評価を下げていたわけではなかったのです。
しかし、ヘルプフルコンテンツアップデート後のGoogleは「人の役に立たないコンテンツ(低品質コンテンツ)」を明確に定義し、検索エンジンがマイナス評価を下す可能性があると示唆しています。これにより、低品質コンテンツをサイトに置いておくリスクが高まっています。
ヘルプフルコンテンツシステムの評価基準とは?
ヘルプフルコンテンツシステムは具体的にどのような評価基準で、ユーザーにとって価値のある情報を判別しているのでしょうか。
そのヒントとなるのが、Googleがヘルプフルコンテンツアップデートとほぼ同時期に公開した「2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと」という記事です。ここでは、Google公式記事から「高品質なコンテンツ」と「低品質なコンテンツ」について考えます。
高品質なコンテンツ
Googleは「2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと」の中で、以下の6つの質問に「はい」と答えることができるなら、高品質なコンテンツを作成するアプローチが正しく行われている、と定義しています。
質問①
特定のユーザー層がすでに存在しているか、想定されており、その人たちがビジネスまたはサイトを直接訪問した際に、コンテンツを有用だと感じてくれると思いますか。
質問②
コンテンツは、実体験や深い知識(たとえば、実際に商品やサービスを使用したり、ある場所を訪れたりした経験に基づく特別な知識)を明確に示していますか。
質問③
サイトには主要な目的またはテーマがありますか。
質問④
コンテンツを読み終わったユーザーは、あるトピックについて、目的を果たすのに十分な
情報を得たと感じることができますか。
質問⑤
コンテンツを読んだユーザーは、有益な時間を過ごせたと感じられますか。
質問⑥
コア アップデートや商品レビューに関する Google のガイダンスに留意していますか。
参照:https://developers.google.com/search/blog/2022/08/helpful-content-update?hl=ja
6つの質問から、高品質なコンテンツには以下の条件があると推測できます。
①「読者を想定し、その読者に役に立つ情報を提供している」
②「知識や専門性に基づく正確な情報であることを証明できる」
③「サイト全体で提供する情報がテーマや目的で統一されている」
④「ユーザーの検索意図の応える情報提供がされている」
⑤「学びや問題解決といった価値ある体験が提供されている」
⑥「Googleのガイドラインを守り、アルゴリズムに適応した内容を提供している」
内容的には目新しくはありませんが、ヘルプフルコンテンツアップデートにより、これらの条件の判定精度が高くなっていると推測できます。
これからは今まで以上に、コンテンツのE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)やオリジナル性の確保、サイト全体での専門化が重要になってくると考えるべきでしょう。
低品質なコンテンツ
一方で、同記事では検索エンジンの評価を優先したコンテンツを作成しないように求めており、以下の質問に「はい」と答えた場合、アプローチの方法を考え直すように警告しています。
質問①
コンテンツは、人間のために作成されたというより、主に検索エンジンからユーザーを引き付けるためのものですか。
質問②
どれかが検索結果に表示されることを期待して、さまざまなトピックで多くのコンテンツを制作していますか。
質問③
多くのトピックについてコンテンツを作成する際、かなりの部分に自動化を使用していますか。
質問④
価値を付加することなく、主に他の人の意見を要約していますか。
質問⑤
既存のユーザー層のためではなく、ただ話題になっているという理由で記事を書いていますか。
質問⑥
ユーザーがコンテンツを読み終わっても、他のソースからより良い情報を得るために再び検索する必要があると感じさせてしまいますか。
質問⑦
Google が優先する文字数があるとどこかで聞いたか読んだかしたために、特定の文字数になるように記事を書いていますか(そのような設定は存在しません)。
質問⑧
検索トラフィックを獲得できると考えて、実際の経験がないにもかかわらず、ニッチなトピックを扱うことにしましたか。
参照:https://developers.google.com/search/blog/2022/08/helpful-content-update?hl=ja
8つの質問から、Googleに低品質と見なされるリスクがあるコンテンツには、以下の特徴があると推測できます。
①ユーザーより検索エンジンの評価を優先して作成されている
②サイト全体のテーマや目的を無視して作成されている
③コンテンツの大部分がAIによって生成されている
④内容的にオリジナル性や独自性が欠けている
⑤話題性重視で専門性や関連性を無視している
⑥想定するユーザーの求める情報が不足している
⑦ユーザーより検索エンジンのアルゴリズムを優先している
⑧専門性や経験、知識を無視して書かれている
ヘルプフルコンテンツアップデート後、検索エンジンはより人間に近い基準でコンテンツを評価できるようになりました。低品質なコンテンツを見抜く精度が高まったことで、検索エンジン対策より、高品質なコンテンツの作成の方が遥かに重要になっています。
そのことを示すように、質問内容ではこれまで検索エンジン対策として用いられてきた手法が引き合いに出されています。
たとえば、質問⑧で述べられている「ニッチなトピックを扱うこと」自体は、競合を避ける上で、今でも効果が見込める対策です。しかし、現在の検索エンジンは、コンテンツを「専門性」や「信頼性」といった品質に関連した要素で評価するため、ニッチなだけでは上位表示を狙えません。このように、現在の検索エンジン対策は高品質なコンテンツが前提にないと効果を発揮できなくなっています。
アップデート後、ユーザーファーストを損なう検索エンジン対策への評価がさらに厳しくなっています。これにより、以前にも増して「人の役に立たないコンテンツ」が全体評価に与える悪影響が強まっています。
AI生成コンテンツに対するスタンス
ヘルプフルコンテンツアップデートによってユーザーファーストが厳格化される延長線上で、GoogleのAI生成コンテンツに対するスタンスも明らかになりました。
Googleは2023年2月にAI生成コンテンツに関するガイダンスを発表しています。このガイダンスの中では、Googleはコンテンツ作成でAIを利用することを認めています。
https://developers.google.com/search/blog/2023/02/google-search-and-ai-content?hl=ja
ここでは、GoogleのAI生成コンテンツに対するスタンスについて解説します。
高品質であれば制作方法は問わない
Googleは先述した「2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと」の中で、コンテンツの大部分をAIで自動生成しているのであればアプローチの仕方を見直すべきだ、と述べています。これは、AIに頼りきってしまうと読者が求めるニーズやオリジナル性、E-E-A-Tを満たすのが難しくなり、低品質なコンテンツが量産されてしまう可能性があるからです。
一方で、Googleは「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」の中で、AI生成であるかを問わず、高品質のコンテンツを評価する、とも明言しています。つまり、高品質なコンテンツの条件を満たせるのであれば、チャットGPTやGeminiのようなAIアドバイザーをコンテンツ作成に活用しても構わない、というのがGoogleのスタンスです。Googleは、人の手で作成されたか、AIで作成されたかを問わず、コンテンツの品質で検索順位を決めています。
Google自身もGeminの開発に力を入れていることから、AIツールの利用はますます一般化していくと予想されます。将来性を見越し「人間主導で、AIを補助ツールとして活用する」というのが、現時点で推奨されるコンテンツ作成のスタイルと言えるでしょう。
ランキング操作はNGだが自動化は必ずしもスパムではない
Googleはランキング操作を主目的としたコンテンツ作成を一貫して禁止しています。
これは、生成AIを悪用した大量生成コンテンツも同様です。「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」の中でも、検索結果のランキング操作を主な目的として、コンテンツ生成に自動化(AI を含む)を利用することは、スパムに関する Google のポリシーに違反していると明記されています。
その一方で、Googleは同項目で「AI生成を含め、自動化を利用したコンテンツすべてがスパムとは限らない」とし、スポーツの試合結果や天気予報などの有用例も挙げています。高品質なコンテンツの提供が前提にあるなら制作方法は問わない、というGoogleのスタンスが、ここでも強調されています。
ヘルプフルコンテンツアップデート後の注意点
アップデート後、人間・AIに関わらず、高品質なコンテンツが評価される傾向が強まったことがわかりました。これにより、検索順位がページ単位ではなく、サイト単位の評価で決まる傾向も強まっています。総合的な評価が加わることで、低品質なコンテンツがサイト全体の評価を下げる可能性が指摘されています。
ここでは、ヘルプフルコンテンツアップデート後の注意点について解説します。
サイト全体で評価される
アップデート後に導入されたヘルプフルコンテンツシステムは、ページ単位ではなく、サイト単位で評価するアルゴリズムです。
このアルゴリズムは、サイトをサイト内にある全コンテンツで「総合的」に評価します。そのため、低品質なコンテンツが多ければ多いほど、サイト単位の評価は悪くなります。
サイト単位の評価は各コンテンツに波及します。つまり、サイト単位で低品質と見なされれば、各コンテンツの検索順位も下がりかねないということです。
このアルゴリズムにより、サイト内に低品質なコンテンツがあるだけで検索順位が下がる可能性が高まりました。アップデート後、低品質なコンテンツの悪影響は、間接的なものから直接的なものへ変化しています。
過去に有用だったコンテンツがサイト評価を下げる可能性がある
低品質なコンテンツを見抜く精度が向上したことで、過去に有用だったコンテンツがサイト評価を下げる要因になっている可能性が高まっています。
ヘルプフルコンテンツアップデート後は、特に「ユーザーの検索意図に答えていない記事」や「内容が薄い記事」への評価が厳しくなっています。これらには、情報が古くなった記事や、サイト全体の網羅性を確保することだけを目的に作成された記事なども含まれるでしょう。
アップデート後は、ユーザーファースト以外の目的で作成されたコンテンツ全般が軒並み評価を下げています。「人の役立つコンテンツか」を基準に過去コンテンツを見直す必要があるでしょう。
改善しても反映に数ヶ月かかる可能性がある
ヘルプフルコンテンツアップデートの評価基準に合わせて、コンテンツを改善することは可能です。
しかし、改善しても、その結果はすぐには反映されません。再評価には数ヶ月~数年かかることもあります。また、評価が改善したからと言って、下がった順位が元に戻る保証はありません。改善後は、焦らず長い目で見守らなくてはならないでしょう。
このような事態の再発防止のためにも、今後は初めからユーザーの役に立つことを前提にしたコンテンツの作成が重要です。そのために、次項ではユーザーファーストを基準としたヘルプフルコンテンツアップデート対策について解説します。
ヘルプフルコンテンツアップデートの対策
ヘルプフルコンテンツアップデートに対応するにはE-E-A-Tを満たし、ユーザーの検索意図に応えるコンテンツが必要です。また、サイト単位の評価を獲得するためにも、低品質なコンテンツは改善、もしくは排除しなくてはなりません。
E-E-A-Tを満たしたコンテンツ作成
E-E-A-Tとは、Googleが定めているページの品質を評価する指標の1つです。以下の4つで構成されています。
経験(Experience)
専門性(Expertise)
権威性(Authoritativeness)
信頼性(Trustworthiness)
Googleは「E-E-A-T自体はランキングに直接影響する要因ではない」としつつも「E-E-A-T が優れているコンテンツを特定できる要素の組み合わせを使用することは有効」と明言しています。
特に医療や法律といった人々の生活に大きな影響を与えるYMYLジャンルで、E-E-A-Tは極めて重要です。このようなジャンルでは、誤った情報が人の財産や健康に大きな悪影響を及ぼすため、E-E-A-Tで情報の正確性を担保できないと、検索エンジンがコンテンツを評価しない傾向があります。
情報は内容だけでなく、誰が伝えるかも重要です。たとえば、健康に関するトピックなら、同じコンテンツでも、医療関係者の監修がつくかつかないかで、安心感や説得力が違ってきます。ユーザーファーストを達成するためにも、E-E-A-Tを満たしたコンテンツ作成を心がけましょう。
検索意図を考慮したコンテンツ作成
コンテンツがユーザーファーストを満たす上で基本となるのが、ユーザーの検索意図に応える内容であることです。
検索意図に応えるコンテンツを制作するには、ターゲットが抱える問題やニーズを正確に把握し、求める情報を可視化する必要があります。
基本的な手順としては、十分に情報収集を行いつつターゲットのペルソナを設定し、その行動・思考パターンから課題やニーズを洗い出します。その上で、課題やニーズを満たすのに必要な情報を過不足なく提供します。
ターゲットを設定しない不特定多数に向けたコンテンツは、誰の検索意図も満たせなくなりがちなので注意しましょう。ターゲットを明確にし、そのターゲットにとって役立つ情報を提供することが、ユーザーファーストなコンテンツを作成する基本です。
サイト全体での品質向上
ヘルプフルコンテンツアップデートにより、サイト単位で評価するアルゴリズムが導入されました。サイトの全コンテンツを総合的に評価されるので、対応するにはサイト全体での品質向上が重要になります。
特に作られてから長い年月が経過している大規模サイトでは、情報が古くなっているコンテンツや、過去アルゴリズムに対応して作られたコンテンツが少なくありません。アップデート後は各コンテンツを分析・調査し、現在の品質基準を満たしているかチェックする必要があります。
アップデート後は、低品質コンテンツを排除しつつ、サイト単位で評価されることを意識する必要があります。
まとめ
ヘルプフルコンテンツアップデート後、検索エンジンの高品質なコンテンツの評価精度と、低品質なコンテンツの識別精度が向上しました。アルゴリズムが更新された延長線で、AIへのスタンスも明確になり、高品質であれば制作方法は問わないことが公式記事にて明言されています。
アップデート後のSEO対策で特に気を付けたいのが、現在の評価基準で低品質と見なされるコンテンツと、サイト単位での評価です。
コンテンツの識別精度が向上したことで、過去アルゴリズムで有用だったコンテンツが評価されないどころか、低品質と見なされるケースが多くなっています。低品質なコンテンツが多いとサイト単位での評価が低下し、結果としてサイト内コンテンツの検索順位に悪影響を及ぼします。新しい評価基準に対応するために、今まで以上に低品質なコンテンツには注意が必要です。
ヘルプフルコンテンツアップデートによる変化を把握して、適切なSEO対策を取りましょう。