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ブログで本の紹介したい!でも、著作権は大丈夫? 書評の基本ルールを解説 

ライティング

読書好きが高じてブログ執筆を始める人は少なくありません。その中には書評ブログで自分の読んだ本を紹介したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ブログ初心者が書評ブログを始めようとすると、すぐにある疑問にぶつかります。それは「どこまでネタバレしていいのか?」といった著作権に関する問題です。

この記事では書評ブログの基本ルールとなる著作権について解説します。
著作権を侵害しない書き方は書評ブログを続けていく上で、何よりも優先すべきです。法的リスクを回避し、著者への敬意を損なわないためにも、ルールをしっかり把握しておきましょう。

これからブログで本を紹介したいと考えている人には必見の内容です。当てはまる方は、ぜひ記事をご参照ください。

ブログで本を紹介するなら知っておくべき「著作権」とは

著作権(知的財産権)とは『知的な創作活動によって何かを創り出した人に対して付与される、「他人に無断で利用されない」といった権利(文化庁HPより)』です。

ここではブログ運営に関わる著作権の法改正と、違反者への罰則について解説します。

<中見出し>近年の法改正に伴い「親告罪」から「非親告罪」に
ネットでは俗にいう「ネタバレサイト」が多く存在します。このようなサイトが検索上位に上がっているのを見ると、つい著作権を甘く考えてしまいがちです。

しかし、実際は著作権侵害を取り締まる動きは年々強くなっているのが現状です。

平成30年には著作権法改正に伴い、著作権等侵害罪の一部が「非親告罪」化しました。

親告罪とは被害者が直接被害を申し出ないと検察が動けない罪です。

例えば、漫画の無断転載などは明らかな違法行為ですが、親告罪では漫画の著者自身が不正を訴えない限り、相手を公訴できませんでした。

しかし、平成30年の法改正により一部の著作権侵害が非親告罪化することで、著者自身が訴えなくても検察が自ら判断して不正を取り締まることが可能になっています。

非親告罪の認定条件を、文化庁『環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の概要(著作権関係)』では次のように定めています。

①対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
②有償著作物等(※)について原作のまま譲渡・公衆送信又は複製を行うものであること
③有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害されること

※有償で公衆に提供又は提示されている著作物等

参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_hokaisei/pdf/r1408266_01.pdf

3つの条件がすべて揃って初めて非親告罪になります。認定条件は厳しいですが、検察の判断で著作権の侵害を取り締まれるようになったのは大きな変化です。

著作権を侵害するとどうなるか

著作権を侵害することで降りかかるリスクは「刑事罰」「損害賠償請求」「ブログ閉鎖」の3つです。ここではそれぞれを解説します。

①刑事罰
刑事罰では下記の罰則のいずれか、または両方が科せられます。

  • 10年以下の懲役
  • 1000万円以下の罰金(法人の場合:3億円以下)

著作権法119で規定される罰則です。会社ぐるみでの著作権侵害は個人より重い罰則が科せられます。

条文は以下の通りです。

「第百十九条
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」

参照:https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/0612_copyrightlaw/chapter08.html

②損害賠償請求
損害賠償請求では、本来払うべきだった掲載料やライセンス料が請求されます。

掲載料などの損害額に関しては事情が考慮されます。

例えば、1冊の利益額は500円の書籍が違法アップロードされ、100万ダウンロードされたします。ダウンロード数で単純計算するなら、損害額5億円です。

しかし、その書籍が普通に販売すると、1万冊しか売れないならどうでしょう?

譲渡数量からの推定される損害額は「その侵害がなければ著作権者が売ることができた著作物の利益」よって決められます。つまり、この場合、請求できる損害額は500万円までということになります。

このように、損害額は著作権者の販売能力によって減額される場合もあります。

一方で、ライセンス料に関しては、減額されません。

特許庁のホームページに掲載されている条文は次の通りです。

「(3)損害賠償額の算定規定その3(著作権法第114条第3項による救済)
著作権者等は、著作権侵害を行った者に対し、ライセンス料相当額を損害額として請求することができます。この規定は、損害額の最低限を法定した規定と考えられており、侵害者が実際の損害額がこれより小額であることを主張して損害賠償を減額させることはできません(以下略)」

参照:https://www.jpo.go.jp/support/ipr/copyright-kyusai.html

③ブログ閉鎖
著作権を侵害された人は著作権法第112条で定められているとおり差止請求権があります。

差止請求とは、他人が違法行為を行っている、あるいは行うおそれがある場合に、その行為を止めさせるための法的手続です。よって著作権を侵害してしまうと、権利者からブログの閉鎖を要求されることもあります。

総務省のホームページに掲載されている条文は、次の通りです。

「第百十二条  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」

参照:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security_previous/kiso/k05_03.htm

どれもブログ運営に致命傷を与えかねないペナルティです。リスク回避のためにも著作権には常に細心の注意を払いましょう。

ブログ運営における著作権のポイント

著作権を侵害せずに本の紹介をするには何に注意すればいいのでしょうか?

ここでは、本を紹介するうえでの著作権のポイントを4つ解説します。

「悪質な」ネタバレは禁止

1つ目は、購買意欲を削ぐような「悪質な」ネタバレの禁止です。

書評ブログでは、本の内容に触れなくてはならないため、ある程度のネタバレは許容される傾向があります。ただし、悪質なネタバレは別です。

悪質なネタバレかどうかは、主に「翻案権」を侵害しているかが争点になります。翻案権とは、もともとの著作物の特徴を活かしながら翻訳・翻案などして二次的著作物を創作する権利です。

この権利を侵害する行為には、ブログなどで書籍内容の主要部分や細かいストーリーを紹介することが含まれる「可能性」があります。

可能性という表現からもわかるように、どこまでのネタバレを翻案権の侵害とするかは曖昧です。

一方で、1つだけ明確な判断基準があります。それは「読者の購買意欲に悪影響を与えるか否か」です。著作権保有者に不利益を及ぼしているなら、それは間違いなく悪質なネタバレとなります。

書評ブログでのネタバレはあくまで著者の利益を損なわないことを前提にしましょう。

要約はグレーゾーン

2つ目は、要約は著作権的にはグレーゾーンにあたることです。

本の要約をする際に覚えておきたいのは「情報自体には著作権はないが、表現には著作権がある」ことです。これを本の紹介に置き換えると「本にある文章表現そのまま使って情報を載せてしまうのはNGだけど、情報を自分だけの表現に直して載せるならOK」と解釈できるでしょう。

しかし、表現を「オリジナルか、翻案か」を判断する基準は曖昧です。状況次第でどちらとも取れるため、著作権的に安全とは言い切れません。この件でも「読者の購買意欲に悪影響を与えるか否か」が大きく関係してくるでしょう。

著作者に許可を得ていない限り、要約にも一定のリスクがあることを覚えておきましょう。

表紙画像のパブリシティ権

3つ目は、ブログ初心者が見落としがちな表紙画像のパブリシティ権です。

本の紹介をするブログであっても、勝手に本の表示画像をアップすることはパブリシティ権の侵害になる恐れがあります。

パブリシティ権とは、商業的な価値がある著名人・キャラクターの画像を第三者が利用する権利です。有名な企業ほどパブリシティ権に敏感な傾向にあります。

たとえば、ジャニーズやディズニーキャラクターは、版権に厳しいことで特に有名です。

パブリシティ権の侵害を回避して本の表紙画像を掲載する方法としてはAmazon・楽天などの商品リンクを貼る方法があります。

そのまま本の表紙画像を載せるのは無理でも商品リンク画像であれば、アフィリエイトサービスの規約範囲内で利用できます。

著作権だけでなく、パブリシティ権の侵害にも気を付けましょう。

引用はルールを守ればOK

4つ目は、引用の利用です。

引用とは、他者が作成した文章などを自身の制作物の中でそのまま用いることを指します。
コピーとの大きな違いは「引用元の記載の有無」です。
この他にも引用にはルールが定められており、正しく守らないと著作権を侵害するおそれがあります。引用(第32条)には次のように定められています。

「[1]公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。
(注5)[2]国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。」

引用元:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

ここで注目したいのは「公正な慣行に合致する」「正当な規範内」という条文です。この条文に合致していることが、引用を用いる基本条件になります。

次項ではこの条件をより具体的にした引用のルールについて紹介します。

本の紹介における引用のルール

ルールを守らない引用は著作権の侵害になる恐れがあります。

ここでは、本の紹介に関連する引用のルールを5つ紹介します。

引用する必然性

1つ目は引用する必然性です。これは、文章などの流れにおいて引用を用いるのが自然であるかどうかが争点となります。

例えば、本Aを紹介するブログがあったとします。この場合、本Aを紹介するために本Aから一文をブログに引用するのは、必然性があり自然です。

一方で、本Aを紹介するために本Aとは関係がない本Bから引用を用いるのは、必然性を欠き不自然です。

引用を用いる際は内容との関連性に注意しましょう。

かぎ括弧

2つ目は、かぎ括弧などによる区別です。

視覚的に引用部分だと知らせるためのルールなので、見て区別がつくのであれば、かぎ括弧でなくても構いません。

たとえば、ブログであれば引用部分を枠で囲むなどの処置でもいいでしょう。逆に引用部分だとわからないようにするのはNGです。

引用を用いる際は、見た目で引用だとすぐに分かるように記載しましょう

主従関係

3つ目は、主従関係の明確化です。

引用はあくまで補足(従)で、メイン(主)は自分の著作物であることを明らかにしなくてはならない、という意味です。

たとえば、文章のほとんどが引用部分で占められているなら、それは補足(従)とは言えないでしょう。また「引用部分にはこのように書かれていた。私もその通りだと思う」といった引用部分の主張をメインに展開するのも、やはり主従関係の(従)とは言えません。

引用を用いる際は、自分の著作物や主張がメイン(主)で、引用は(従)あることをはっきりさせることを心がけましょう。

引用元

4つ目は、引用元の明記です。

引用を用いる場合は、著作物の出所を明示する義務があります。
文化庁のホームページで掲載されている条文は次の通りです。

「(4)出所の明示がなされていること。(第48条)」

引用元:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

具体的には、引用部分の後に著者名、著作物名、出版社名、掲載ページなどを記載します。

引用を用いる際は、コピーでないことを明確にするためにも引用元は必ず記載しましょう。

正確な引用

最後は、一切改変しない正確な引用です。

引用する際は「一言一句正確に」同じ文章や事例を掲載する必要があります。

自分の言葉に直したり、縮めたりするのはNGです。また、全文を引用しない場合は(中略)のように省略したことがわかるように記載しておかなくてはなりません。

引用する際は、手を加えずそのまま掲載しましょう。

まとめ

著作権には曖昧な部分も多いです。法律を把握しても「どこまでネタバレをしていいか」という悩みは完全には解決されないでしょう。

一方で著作権は著作者が得るべき利益を守ることを目的としています。これは裏を返せば権利保持者にとって有益であれば、多少のネタバレが含まれていも処罰対象にはならないということです。

著作物の売上に貢献してくれているサイトを潰そうとする権利保持者はまずいません。本の紹介で著作権の判断に迷ったら、まずブログ内容が「読者の購買意欲」にどう影響するかを考えることが大事でしょう。このような「著者の利益を守る」考え方が結果として著作権を守ることにも繋がります。

本の紹介をするブログを開設する方は、読者だけでなく著者ともWin-Winの関係を築くことを心がけましょう。