COLUMNコラム
SNSやサイト投稿に必要なDMCAとは?目的や申請手順を解説
自作したWebコンテンツが模倣されていた場合、模倣Webサイトの運営者に削除依頼を出すのが一般的な対処方法です。しかし、Webサイトに連絡先を載せていない運営者も多いため、連絡を取るのは容易ではありません。
運営者の連絡先が分からない場合は、DMCAに則って対処するという方法があります。DMCAはWebコンテンツを保護するアメリカの法律ですが、場合によっては日本からも申請可能です。
この記事では、DMCAの概要や申請方法、虚偽申請への対処方法について解説します。Webサイト運営者だけではなく、全インターネットユーザーに知っておいてほしい法律ですので、最後まで読んでみてください。
DMCAとは
DMCAとは、デジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)という、1998年10月にアメリカにて制定・施行された連邦法です。Web上の著作物を対象とした法律であり、映画や音楽などの複製を防ぎ、デジタル著作権管理を強化する目的で施行されました。
アメリカの法律のため、日本では直接的に適用されません。ただし、GoogleやTwitterといったアメリカの法人が運営しているWebサイトは、DMCAの適用対象です。コンテンツを掲載しているサイト運営者だけではなく、プロバイダも対象となります。
自作のWebサイトの模倣サイトを表示しないようGoogleに申請すると、模倣サイトを検索結果画面に表示させなくできるのです。模倣サイトが削除されるわけではありませんが、検索経由で模倣サイトを見つけるユーザーはいなくなるため、自身のWebサイトへの流入はを阻害されません。
DMCAが適用できない場合、日本では「プロバイダ責任制限法」に則って対処していきます。
DMCAの目的と重要性とは
DMCAが制定された背景には、Webコンテンツの無制限利用による著作権侵害の頻発や、海賊版流通による金銭的被害などがあります。ここで、DMCA具体的にどのような目的をもって制定されたのかを確認しましょう。DMCAと似た法律である「プロバイダ責任制限法」と「複製権」についても解説します。
著作物の盗用行為から著作権者保護が目的
DMCAは、Web上の著作物の盗用によって生じる被害を抑えるために制定されています。
もし、自作のWebコンテンツが他サイトでコピーされてしまうと、コンテンツの重複と見なされて検索結果画面に表示されなくなったり、他サイトに訪問者が流れて検索流入が阻害されたりしてしまうでしょう。こうした被害を抑制するために、著作物を保護するDMCAが制定されました。
関連法規:プロバイダ責任制限法
プロバイダ責任制限法は、著作権の侵害にあたる海賊版サイトや、名誉棄損にあたる口コミなど、他人の権利を侵害する情報を取り締まるための日本の法律です。
プロバイダが権利侵害情報を削除しなかった場合の損害賠償の免責要件や、権利侵害情報の発信者についての情報を開示するよう、プロバイダに請求できる権利を規定しています。
プロバイダ責任制限法の対象となるのは、他人の権利を侵害する情報のみです。違法でも他人の権利を侵害しない情報や、法に抵触しない有害な情報については同法の対象外となります。
関連法規:複製権
複製権は、著作者のみが自身の著作物を複製する権利を持つことや、著作権者が著作物の利用を他人に許諾できることを規定した日本の法律で、著作権法21条に記載されている著作財産権の一種です。
著作権法において複製は、録画や録音、印刷、書き写しなどの方法で画面や紙といった媒体にて、著作物と同一の有形物を制作することと定義されています。
なお、無形物を制作するのは複製ではありません。コード譜を見てギターを弾くのは、複製ではなく演奏行為となります。
媒体別のDMCAの申請手順は?
DMCAは、アメリカの法人が運営するWebサイトであれば、日本からでも申請可能です。ここでは、Google・Twitter・Instagramでの申請手順を解説します。
この記事では割愛しますが、FacebookやYoutubeにおいても著作権違反を理由に申請可能ですので、トラブルが起きた際は検討してみてください。
Googleの申請方法
Googleでの申請が通れば、検索結果画面から当該URLを削除可能です。
削除申請が通った場合、Lumenというオンラインコンテンツの削除依頼データベースにて申請情報が公開されます。
申請方法は下記の手順を参考にしてください。
- 自身のGoogleアカウントにログインした後、「著作権侵害による削除」にアクセスします。
- 申請フォームにて以下の項目を入力してください。個人が申請する場合、会社名は空欄で構いません。
- 申請者の氏名
- 会社名
- 代理申請の場合は代理する著作権所有者の氏名(著作権所有者自身で申請する場合は「本人」を選択)
- メールアドレス
- 国/地域
- 「著作権対象物を特定する情報とその著作物の説明」にて、自身のコンテンツで著作権が侵害されている箇所を説明します。「〇年〇月〇日に投稿したブログの「黒猫がキッチンの隅でじっとしている」から始まる文章」「ギャラリーページに掲載した黒猫の絵」といった具合で、詳細に記載しましょう。
「当該著作物が許可を受けて掲載されている場所」は、著作物が閲覧できるオリジナルのURLを添付してください。 - 「権利を侵害している著作物の場所」に、削除したいコンテンツのURLを添付します。複数のコンテンツから著作権を侵害されている場合は、「新しいグループを追加」というボタンから新たに申請してください。
- 以下の内容を確認してチェックを入れます。
- 自身のコンテンツの著作権が間違いなく侵害されていること
- 虚偽の削除申請ではないこと、虚偽の申請は処罰されると承知の上でご自身が著作権所有者または正式な代理人であると宣誓すること
- 申請情報はLumenに掲載されること
- 署名日と署名を入力して、「私はロボットではありません」にチェックを入れます。内容に間違いがないかを確認して、送信ボタンを押せば申請完了です。
参考:著作権問題によるコンテンツの除外
参考:Lumen
Twitterの申請方法
Twitterは、著作権侵害の申請を受けた場合、当該コンテンツの削除や表示制限を行う可能性があると公表しています。申請者が入力した氏名や住所、電話番号、メールアドレスなどの申請情報は当該コンテンツの所有者に通知されるため、注意が必要です。
また、著作権侵害の申請を行う前に、公正使用か否かを確認しましょう。公正使用はフェアユースとも呼ばれ、著作権を侵害しない範囲での使用を意味します。公正使用だとしても、著作権侵害であると判断した場合、まずはTwitterに報告せず当人同士で解決しましょう。
Googleと同様に、申請情報はLumenにて公表されます。著作権侵害は以下の手順で申請可能です。
- Twitterにログイン後、ヘルプセンターのサイドバーを開いて「お問い合わせ」に移動し、「知的財産権に関する問題のヘルプ」から「著作権を侵害している可能性のある行為を報告したい」を選択します。
- 著作権を侵害されている人物を選択しましょう。本人が申請する場合は「私が著作者です」を選択してください。
- フォームに以下の項目を入力します。
- 著作者の氏名
- 申請者の氏名
- 会社名
- 役職
- メールアドレス
- 住所
- 国名
- 著作権侵害の内容について、以下の項目を入力してください。「著作物の説明」と「著作権侵害についての説明」は詳細に入力しましょう。
- 著作権侵害の発生場所
- 著作物の種類
- 著作物の説明
- 著作物が閲覧できるURL
- 著作権侵害をしているコンテンツのURL
- 著作権侵害についての説明
- 以下の内容を確認してチェックを入れます。
- 著作権法に基づき責任を問われる場合があると承知すること
- 著作権侵害であると認識していること
- 虚偽の申請ではないこと
- 電子サインに署名して送信ボタンを押せば完了です。
参考:著作権に関するTwitterのポリシー|Twitterヘルプ
参考:Twitterのフェアユースポリシー|Twitterヘルプ
Instagramの申請方法
Instagram上で著作権侵害の申請があった場合、当該コンテンツが削除される可能性があります。当該コンテンツの投稿者には、権利所有者の氏名やメールアドレスなどが通知される仕組みです。異議申し立てをしないまま同様の投稿を続ければ、特定機能の利用制限やアカウント停止措置がとられるでしょう。
申請方法は以下の通りです。
- ログイン後、ヘルプセンター内の「著作権報告フォーム」にて権利所有者との関係を選択します。自身で申請する場合は「私は権利所有者である」にチェックを入れてください。
- 以下の項目を入力します。
- 申請者の氏名
- メールアドレス
- 住所
- 権利所有者の氏名
- 権利所有者の所在地
- 以下の項目を入力してください。
- 著作物の種類
- 著作物が閲覧可能なURLまたは著作物の説明
- 著作権侵害の疑いがあるコンテンツの詳細とURL
- 報告理由(選択式)
- その他の情報
- 以下の内容を確認してチェックを入れます。
- 著作権を侵害されていると確信していること
- 入力した情報に間違いがないこと
- 虚偽申請の場合は偽証罪に問われること
- 電子署名または物理署名をして送信ボタンを押せば申請完了です。
参考:Instagramでの著作権侵害を報告するにはどうすればよいですか。
参考:Instagramのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)指定代理人に連絡するにはどうすればよいですか。
DMCAの悪用と正しい対処法とは
DMCAは、著作権侵害を取り締まり、Webコンテンツを保護するための法律です。しかし、本来の目的から逸脱して悪用されるケースも珍しくありません。
ここでは、悪用事例を紹介するとともに、虚偽の削除申請への対処法を解説します。
悪用事例を紹介
2017年8月、ビジネスSNSの運営企業が、社長と一部取締役しか利益を得られない方法で株式を上場したのではないかという内容のブログ記事が投稿されました。その後、ブログに掲載された社長の顔写真が著作権侵害にあたるとして、写真が削除された上に、当該ブログのURLを掲載したツイートも表示されなくなったのです。
同企業は、画像の無断使用は著作権違反であると説明しましたが、社長の顔写真はインターネット上で出回っているため、当該ブログにだけDMCA申請をするのは不自然といえます。そのため、同企業の悪評を隠ぺいする目的でDMCAを悪用したのではないかと批判されました。
虚偽のDMCA削除申請とは
悪評を隠ぺいするためだけではなく、迷惑をかけるためにDMCAを悪用するケースもあります。
2018年2月、ブラウザゲームの「艦隊これくしょん -艦これ-」の公式Twitterが一時的に凍結されました。「アカウントに使用されているアイコンは自身の著作物である」という虚偽のDMCA申請が行われたためです。虚偽申請を行った人物はゲームとは無関係の第三者であり、偽名で申請したことも問題視されました。
Twitterポリシーには、虚偽の申請や悪意のある申請を行った場合、法的に処罰されると明記されています。Twitterに限らず、著作権侵害を報告する以外の目的でDMCAを利用してはなりません。
虚偽のDMCA削除申請への対処法
もし、自身のWebコンテンツが虚偽申請によって削除された場合は、異議申し立てを行いましょう。
Google経由で申請された場合、Googleから「DMCAに基づくGoogle検索からの削除のお知らせ」という件名のメールが届きます。メールに添付された「DMCAに基づく異議申し立て通知」というURLをクリックしてフォームに移動し、必要項目を入力して送信ボタンを押せば異議申し立ては完了です。「Googleからコンテンツを削除する」というページからも異議申し立てできます。
異議申し立てを行う前に、自身のWebコンテンツに非がなかったか必ず確認しましょう。異議申し立てはも、DMCA申請と同様に法的手続きです。自身のコンテンツに非がある状態で異議申し立てを行えば、虚偽申請として法的な処罰を受けなければなりません。画像の使用や文章の引用方法に問題はなかったか、再度確認しましょう。
虚偽のDMCA削除申請に対する罰則
DMCAで虚偽申請を行った場合、米国著作権法第512条f項の「不実の表示」に値するため、偽証罪に問われる恐れがあります。
また、虚偽申請によりWebサイトの運営に支障が出た場合は、威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪に問われたり、民事訴訟に発展したりすることもあるので注意が必要です。極めて悪質と判断されれば、損害賠償を請求される場合もあるでしょう。
虚偽申請は、法的に罰則を受けるだけではなく、社会的信用も失います。著作権侵害を報告する以外の目的では絶対に利用してはなりません。
著作権を違反しないための心得
簡単にWebコンテンツのオーナーになれる状態だと、誰もが著作権を侵害してしまう危険性があります。著作権を保護する行動を把握した上で、Webコンテンツの投稿を楽しみましょう。
自分の著作権を守る方法
自身が著作権侵害行為に巻き込まれてしまった場合は、著作権を侵害した加害者に直接抗議しましょう。著作権侵害の被害者は、「損害賠償請求・不当利益返還請求」「謝罪文の公表をはじめとする名誉回復措置要求」「著作物の利用停止要求」という3つの民事上の請求を行えます。請求後は示談成立を目指しましょう。
加害者が著作権侵害を認めず、示談交渉に応じない場合は法的な手続きに移行します。主な解決方法は、裁判所に判決を求める「民事訴訟」や、裁判所を介して話し合う「民事調停」、加害者の刑事処分を要求する「刑事告訴」の3つです。法的手続きを取る場合は、法律の専門家を頼ることをおすすめします。
相手の著作権を守る方法
他人の著作権を侵害しないためには、著作権者への配慮を怠らないことが重要です。
他人の著作物を引用したい場合は、引用部分と引用元を明記しましょう。無断で引用してしまうと著作権侵害にあたりますが、引用のルールを遵守すれば違法にはなりません。
また、著作権者に直接許諾を得られれば他人の著作物が利用できます。後々あとあとトラブルが起きないように、あらかじめ利用目的や使用料などを決めておきましょう。
個人や家族間など限られた範囲内で利用するのであれば、私的利用に該当するためとみなされるため、無断使用であっても著作権侵害にはなりません。スマートフォンの待ち受け画面などは私的利用に該当します。ただし、既に著作権違反している画像と知りながらダウンロードして待ち受けにした場合は、法的に処罰されますのでるため、私的利用であっても注意しましょう。
違反してしまった時の対処実例
著作権違反をしてしまった場合、著作権者や代理人から通知書が届きます。
通知書が届いたら、まず指摘を受けたWebコンテンツが本当に著作権侵害にあたるのかを確認しましょう。運営を外注している場合は彼らから聞き取り調査を行い、著作権侵害であると確信したら速やかに当該コンテンツを削除してください。
通知書への回答には、著作権侵害が起こった経緯や著作権を侵害したことへの謝罪、当該コンテンツの削除、再発防止策などを含め回答しましょう。常習的に著作権侵害を行っていない限り、当該コンテンツを削除すれば損害賠償を要求されることはほとんどありません。著作権者が対応に納得すれば、示談書を作成して解決となります。
また、特定のWebサイトに公開したコンテンツがDMCA違反だと判断された場合は、そのサイトの運営者から通知されるでしょう。
開発プラットフォームであるGitHubでDMCA違反をすると、メールにて通知されます。1営業日以内に返信しないとアプリケーション開発に必要なシステム構築データやプログラムが保管されているデータベースを利用できなくなってしまうため、速やかな対応が必要です。
参考:GitHubからDMCA takedownが来たときの対応手順
DMCAに関連した疑問
DMCAは著作物の保護に有効な法律ですが、問題点も指摘されています。DMCAのメリットとデメリットを理解して、正しく活用していきましょう。
DMCAによるデメリットはある?
DMCA申請を受けたプロバイダは、迅速に当該コンテンツを削除する義務があります。漫画の無断転載サイトや映画の無断アップロードなど、明らかに著作権に違反しているコンテンツが散見されるインターネット上では、こうした迅速な対応が必要です。
しかし、削除対応の速さを求めるあまり、正確性に欠けることも少なくありません。
GoogleやYouTubeといった大規模なサイトでは、大量に届く削除申請を迅速に処理できるよう審査基準が甘く設定されているため、誤って削除されてしまうコンテンツもあります。
誤削除を防ぐためには、審査内容の見直しやAI技術の向上が重要ですが、インターネットユーザーが正しくDMCAを活用することも重要です。
諸外国の著作権侵害への対応は?
アメリカでは、インターネット上で著作権侵害があった場合、差止要求や損害賠償請求もできますが、ほとんどがセーフハーバーに則って対処されています。セーフハーバーとは、特定のルールに従えば法令違反にはならないという許容範囲を示す言葉です。
また、DMCAでは、著作権侵害の被害者はプロバイダに加害者の情報開示を要求できると明記しています。
イギリスでもセーフハーバーに則って当該コンテンツを削除するのが一般的な対応です。法的な対応としては、Webサイトへのアクセス制限が活用されています。
著作権侵害の被害者は、裁判所から情報開示命令を得られれば加害者の特定が可能です。民事訴訟法上、裁判外での任意開示請求や匿名訴訟は認められていません。
フランスでは、Webサイトへのアクセス制限や検索結果からの削除など、幅広く対応可能な法律が整備されています。
著作権侵害の被害者が加害者を特定する場合、裁判所から情報開示・調査・鑑定・保全のうち必要な命令に従うを得る必要があります。民事訴訟法上の決まりで、裁判外での任意開示請求や匿名訴訟はできません。
参考:諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策調査 説明資料(株式会社三菱総合研究所)
参考:発信者情報開示に関する 諸外国の制度について(株式会社野村総合研究所)
DMCAにも課題はある?
DMCAは著作権者に有利な法律です。その反面、著作物を利用する側にとって不利な法律ではないかという懸念もあります。アメリカ合衆国憲法修正第1条で定められている表現の自由が侵害されたと感じる方や、フェアユースでの許容範囲が狭められたと思う方も少なくありません。
こうした懸念を解消するには、DMCAを正しく利用して、著作権法の知識を深めることが重要です。DMCAの悪用件数や著作権侵害の加害者が減れば、規制を厳しくする必要がなくなります。インターネットユーザーが著作権法の知識をどれだけ深められるかが、今後の課題となるでしょう。
まとめ
この記事では、DMCAについて解説しました。DMCAはWebコンテンツを保護するための有効な手段となります。しかし、同時に強力な手段でもあるため、悪用は厳禁です。自身のWebコンテンツの安全性を守るためには、逆に加害者とならないための正しい知識を身に付ける必要があります。
著作権法を正しく理解して、快適にWebコンテンツを発信していきましょう。